嘘みたいだと思った。 こうしてまた、こんな風に触れる事が出来るのは。 ゾロがどう思って受け入れてくれたかまで、考えが回らなかった。今思うと最低だ。 自分の心の整理に躍起になって、それがうまくいかなくてイライラして。 でもお前もズルイ。そんなおれの様子、全部判っていて煽ったろ。自分からは何も言わないで。 おれに言わせる罠仕掛けやがった。婚約とかって…あれのせいで、おれぁ泣く程辛かったんだ。 疎いように見せて、最後まで本音見せないあたり、実は魔性系だったりして。事実、完璧おれは捕まっちまってるし。 重なったままの唇は、おれが角度を変えて深くする度に顎を引いて逃げるくせに、誘うように指はおれの服に縋りつく。 ────何で、お前なんか そう呟いた声すら甘く、台詞の内容とは裏腹に、全て許されてるのが判る。 ちくしょ、相手男だし、身分違いだし、おれメイドだし(…;)いろんな意味で間違ってるぞと理性では勿論判ってるけど止められない。 諦めようと思って出来なかったんだから。 その上、今腕の中にいるコイツが、それでいいとおれを受け入れてんだから。 もういい。正直に、開き直ってやる。 ゾロの顎を軽く押さえ、更に口を開かせて、口腔の奥まで探る。逃げる舌を戯れるように絡める と、鼻から抜けるような声が小さく零れた。 それが段々笑い声のような物になり、「なんだよ」と唇を離すと 「そのカッコの人間に押し倒されてると思うとなァ」 と、改めておれの姿を眺め、吹き出しやがった。 クソ、からかわれてるみてぇだ。 「かーわいい、ヒラヒラのカッコでさ。おれが押し倒す方が、らしーんじゃねェの?」 そんな事まで言い出す。 「こらこら、使用人のメイドに手を出すとはイケナイお坊ちゃんだな」 エロゲーの設定みたいだぞそれ。いやそれはともかく、ここで譲る気は無いぞおれは。その意を込めて、ゾロを組み敷く腕に力を込める。 「そのカッコ見てると笑っちまいそうだし。お前が普通のカッコに戻るまで嫌だ」 笑っちまいそうどころか、既に笑いながらそんな事を言いやがった。 そりゃ酷ぇ。生殺しだ。メイドさんの刑が終わるまでは、あと三週間もあるんだぞ。 不平たらたらとそう言ったら、「三週間くらい待てよ」と呆れたように返されてしまった。 逆に言えば、あと三週間したら好きな事しまくっていいのかという風にも取れるけど、こっちとしては、今すぐ欲しいんで困る。 「だーめ。イケナイお坊ちゃんにはお仕置きです+」 イメクラ倒錯プレイだろうと知った事か。てめェのせいでもう開き直ったし、今更遠慮なんかしねぇぞ。 「何でおれがメイドにお仕置きされなきゃいけねーんだ」 不満げな台詞の内容とは対照的に、表情は面白がってる。…精神的に完璧向こうが上位だな。 身分とか関係なく。やっぱ魔性かもしんない。 「いろいろと黙ったまんまで、イタイケなメイドさんの心をかき乱したお仕置き」 耳元でそう囁いてから、首筋に軽く噛みついたら、ゾロが身を捻って反論した。 「…お互い様だろ…っ」 服をはだけさせて、鎖骨の上をきつく吸う。 そこが弱いのは、初めて抱いた時に探り当てていたんで、しつこいくらいにそこを舌で愛撫する。 それだけで息が乱れる、慣れていない身体。さっきまでの余裕な態度が、腕の中で崩れていくさまに、おれの方が夢中になる。 指先で服の上から胸の突起を探ると、ゾロの身体が大きく跳ねた。 服の上からの愛撫でも、逃げを打つ敏感さに、嗜虐心が刺激される。 「…擽ってぇよ、やめろって…」 荒くなり始めた息に、掠れた声を乗せて不満を伝える。 そんな状態で言われた所で、止めるとでも思うのかよ。 逆に煽られて、ますます刺激を強くしてやろうと、服の下に手を忍び込ませる。 「…ッ、あ」 既に硬くなっているそこを、強めに押しつぶすと、小さく声が零れた。それに気をよくして、おれはますます強くソコを弄る。親指と中指で左右から潰すように挟み、人差し指で先端を撫でたりしながら唇を合わせると、おれの手の悪戯でビクッと反応する動きや、乱れた吐息を唇に感じる事が出来る。それが楽しくて、下半身にも手を伸ばし、更に刺激を与えていく。 「──…っ!」 既に衣服の上からでも判る。硬く反応してるソレを、指先で、円を描くように撫でると、触れた唇が益々熱く震えた。 「ちょっ……」 接吻けから逃れ、待て、と逃げを打つゾロの身体を押さえ込んで、ベルトを外し、下肢を晒す。 「ご奉仕致しますよ、坊ちゃまv」 「アホ!!」 喚くのを無視して、内腿に舌を這わせると、息を飲んで黙り込んだ。ああ、ココも弱いんだっけな。 喘ぎを我慢しているのか、唇を噛み締めて耐えている。 どこまで我慢出来るかななんて思いながら、張り詰めたモノへと舌を伸ばす。 「……ぅ、…」 筋を舌先で舐め上げると、頭の両脇にある、立てたゾロの膝が揺れた。閉じようとするその動きを二の腕で制して、舌で舐めていたゾロ自身を口に含む。 唾液も、滲み出てくる先走りも飲み込まずに、敢えてソコをぐちゃぐちゃに濡らして、手でも扱きながら、滑りを広げていく。 びくびくとソコが震え、絶頂は間近なのがありありと判る程に反応しているのに、声は殺したまま必死で耐えている。それが若干面白くなくて、何とか声を上げさせたい衝動に駆られた。 さてどーしてやろうかなと考えてた所へ、乱れた自分のコスプレじみた服が目に映る。 エプロンは肩ひもが腰まで落ち、胸のリボンはほぼ解けて首に掛かっている。 そのリボンを見て、ふと、ある「悪戯」を考えついた。 「おい……──ッ!!」 ゾロの悲鳴じみた抗議の声が上がった。 おれが、ゾロの勃ち上がった自身に、リボンをきつく巻きつけたせいだ。 根元を押さえ、目前だった絶頂への道を塞き止めてキツく結んでしまうと 「バカ…ッ、てめェ、何しやが……」 途切れる辛そうな声でおれを罵り、結び目を解こうとするが。 「駄目、まだ外すな」 その手を強引に止め、手首を握ってベッドに押さえつける。 「…変なコトすんな…っ」 あァ、確かに変態っぽいかもなー。はは、ただでさえイメクラプレイっぽいのにな。 ゾロが焦れてる様をねめつけながら思う。でもすっげえイイんだコレが。 身体中を駆け巡る熱に火照った肌が、汗ばんで濡れてる様も、焦らされておれを睨みながらも潤んでる瞳も、ダークブルーのリボン巻かれたソレが、ひくひくと震えながら僅かずつ先端から滴を零してるのも。 水分を含んで濡れていくリボンが、じわじわと色を濃くしていく。 その様子を実に楽しく視姦し続けてると、ゾロが暴れ出した。ふざけんなバカとか喚きながら。 そんな状態で怒ってても、そそられるだけなんだけどね。快楽の頂点間近で突き落とされ、必死に耐えている身体は、抵抗したってロクに力が入ってない。 「じゃあさ、ゾロ。入れてくれってオネガイ出来たら外してやるよ?」 オヤジなやり方だなーと思いつつ、こういうネチっこい苛め方すると、マジで反応が面白い…。 真っ赤な顔できつく睨みつけ、だけどどうする事も出来ず、羞恥と快楽で震えている様子が、おれを刺激する。やべ、クセになりそーだ。 そんな風に思いながらその姿を堪能してたら、ゾロがチッと小さく舌打ちし、もがくのを止めた。 「?」 もう少しジタバタしてると思ってたんで、予想外の行動に思わず押さえつける手を緩めた瞬間。 「うわ!」 世界が引っくり返った。 |