「喉が乾いた」 そんな主の言葉にも、おれは即座に笑顔で答える。 「ハイ、只今何かお持ちします! ご・主・人・サマっ!!」 はっきり言ってヤケクソだ。 ……コックとしてこの屋敷に雇われた筈なんだがなあ、自分。 泣いていいか?;; 何せ、今のおれは何とメイドさん。 ダークブルーのワンピースに、白いエプロン。胸元にはおっきなリボン。洋風のメイドルック。 ……ここはコスプレイメクラかっての……。 ここは、かの有名な鷹の目財閥の会長、ジュラキュール・ミホーク氏のお屋敷。 おれは、さっきも言ったが、コックとして雇われた、元一流レストラン副料理長、サンジ。 現在、何故かメイドさんやってます……。 ご主人様ことミホーク氏の、お茶目さんの犠牲者だ。 いや、元々はおれが悪いんだけどね; 一週間前、家宝らしき壷を不注意で割ってしまって、それがどーやら何億とするスゲー代物だったらしく。 そんなん一生タダ働きしても弁償できねーと平謝りしてたら、ミホーク氏、こうのたまいやがった。 「もうよい。弁償もいらん。ただ、これから一月、おれの言う通りにしろ」 こう言われた瞬間、クソ焦ったね。血の気引いたぜマジ。 だってこの言い方、アレっぽいだろ…「金払えないなら、身体で払え」。 普段から、おれと同い年の義理の息子を猫可愛がりしてるミホーク氏だし、ひょっとして美少年趣味でもあるのかと思ったわけさ。ちなみにおれは今19だから…美少年というより美青年かな? 自分で「美」をつけるのもどーかと思いつつ。まあいいか、嘘じゃねぇ。 雇い主の命令は、身体じゃなかった。最悪の事態は何とか免れたが。 「言う通り」とは、コレ…………メイドルック。 何考えてんだオヤジー!!!!!…とは口が裂けても言えまセン。何せ、ご主人様相手だし。 彼にとっては「お茶目な罰ゲーム」感覚なんだろう……。 そう、ある意味とても心は広いとも言えるだろーな、数億の弁償がわりに、一月のコスプレで済ませてくれるっつんだから……。さすが金持ち。ダケドね………。 キッチンの銀のシンクに映る自分の姿を、改めて眺める。 あああああ情けない…………。 「あら、まだ落ち込んでるの、サンジ君」 ミホークことご主人サマの為に、冷たいグリーンティーを作りながら、ぶつぶつ言ってたら。 背後から鈴の鳴るような美声で声をかけられた。 「ナミさんvvv」 同じく、この屋敷のメイドとして働いている女性だ。もンのすげぇ美少女。可愛いメイド服が、とてもよく似合っている。 はっきり言って、この屋敷のメイドさんの制服は、とてつもなく可愛いデザインだ。 メイドというのは本来、可愛いお人形さんではなくて、労働者なのだ。服装も、機能性を重視して然るべきなのに、ここのはどーも「見た目重視」らしい。いらん所にまでレース付けまくり、リボンも意味なくデカく。スカートは短いし、その下に黒のレースを何重にも重ねたパニエが覗く。 労働者をゴスロリさせてどーするよ…。恐ろしい事に、デザインしたのはミホーク氏だという噂まである。あんなムサいオヤジのくせに、可愛い物が意外と好きらしいのだ、彼は…(ちなみにペットは兎2匹だ。名前はジョセフィーヌとキャスリーンである)。 コスプレじみた制服は、ここの従業員達にもかなり抵抗があるらしい。そこそこ可愛い女の子だって、下手すると服に負けちまうし。 それを、ナミさんは極自然に、バッチリと着こなしてしまうからスゴイ。 「あら、サンジ君だって似合ってるわよ、その服v」 褒めたら、そう返された。 「ミホーク様が、この罰にしたの、わかるわーってくらい可愛いわよー」 …………嬉しくないです(泣)。幾ら貴女の褒め言葉でもそれは…; 「ゾロもそう言ってたじゃない」 「あいつのはイヤガラセっすよ…」 ゾロとは、この家の跡取息子の名前だ。つっても、ミホークの実の息子ではなく、義理の息子で。 まあそんなの関係なく、ミホークはこの息子サンを目に入れても痛くない程可愛がってるけど。 ナミさんは、ゾロと同じ小学校で育った幼馴染だから、ご主人様の息子相手でも今さら「ロロノア様」なんて言わない。 そもそも、ゾロ本人があんまりかしこまって相手されるのが好きではないらしい。 最初の会話を思い出す。 就任初日の事。食事の時間になっても、なかなか来ないあいつを部屋まで呼びに行った時の会話。 「ロロノア様、お食事の用意はとっくに出来てます。広間へとおいでください」 「様はいらねぇ。ゾロでいい。そんな言葉使いもしなくていいから、普通に喋れ」 「……普通に?」 「ああ」 「んじゃ、てめェらのエサ用意出来てんだから早く来い。冷めたら味落ちるんだよクソ野郎!!」 お言葉に甘えて、まんま地で申し上げましたヨ。飯食べに来ない跡取息子に腹立ってたし。 普通なら即効クビだなーまあいいか、他におれを雇いたい所なんて幾らでもあるんだという強気から言ってのけたんだけど。 一瞬きょとんとおれを見た跡取息子サマ、次の瞬間に笑い出した。 「テメェ、顔に似合わず言葉使い悪ィな。おもしれぇ」 ご子息様も、お立場に似合わずお言葉使いに問題おありのようです。思わず毒気も抜けた。 それ以来結構仲良くなって、普通にタメ語で話している。 そんな事をつらつら思い返しているうち、現在の自分の悩みを思い出して頭を抱えたくなる。 今は、ゾロとは若干疎遠になってるというか、お互いギクシャクしている。 どう接していいか判らなくて、おれの態度もよそよそしい。 原因は判ってる。 あれって……そう、言うなれば「一度だけの過ち」。 「そう言えばねえ」 思考の渦に巻き込まれかけていたおれを、現実に呼び戻したのは、ナミさんの言葉だった。 「ゾロね、婚約するらしいわよ」 「…………え?」 婚約──────? 一瞬、言葉が理解できず、固まってしまった。 「アラバスタ王国の第一皇女様と。それって、末は王様って事なのかしら。あのゾロがねー」 …何だよそれ。 聞いてない……。 |
メイドサンジちゃん。はっきり言えば、内容的にメイドである必要
実はあんまりナッスィ〜〜ン…
私が単にメイドサンジ書(描)きたかっただけとの噂(吐血)。
ここまでだと何だか、ミホ×サンっぽい気が(笑)。サンゾロですよー。
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