オリキャラ(♀)との絡み有につきご注意;


夜も更け、深夜に差しかかる時間になると、さすがに賑やかだった港の歓楽街も、人が少なくなっていた。
そんな中を、憮然として歩く男が一人。
本来なら、その精悍な身体つきと整った顔立ちは、この時間の怠惰した雰囲気の中で、女からも男からも声がかかるくらい上級のものであった筈なのだが、その殺気すら見えるような様相に、誰も声をかける事が出来ない。

(あーーーーークソ!!最悪だ今日は、くそ……)

誰かさんの口グセを真似るかのような罵詈雑言が、その緑髪の頭の中を駆け巡っていた。




見え透いた誘いではあったが、自分に自信を持つ女の色香は、確かに相当のものだった。
ベッドでの行為も手馴れたもので、自分の愛撫に嬌声を上げ、身体をくねらせ強請ってきた。
なのに。
「あらー?」
間の抜けた女の声が、まだ耳に残っている。恥じらいも無くゾロの股間に手を伸ばし。

「何で勃たないのー?」

知るか、こっちが聞きたい。と、思わず言いかけたくらいだ。
そりゃ確かに、心から没頭しているとは言い難い、やけくそのような状況で縺れ込んだ情交だ。
だけどそれにしたって、自分も一応興が乗ったこういう行為においては、それなりに興奮もするし、勿論勃つものは勃つ。童貞でも無い男なら、普通はそうだと思う。自分だっていつもそうだったのに。
「じゃ、サービス」
と、これまた恥じらいも無く口に含まれた。
ぬるりとした感触と手馴れた技巧には、確かに快楽を感じる。
だけど。


こんなものじゃない、深すぎる程の快楽を、この身体は知っている。


「これでもダメぇ?」
若干硬度は増したものの、背筋を駆け上がる、覚えのある絶頂感。
それはいつまで経っても来そうになかった。
とりあえず、こういう時に女に恥かかすのも悪いかと思い、平常時よりも僅かに硬度が増したくらいのソレで、何とか女を絶頂まで導き、さっさとお開きにした。
自分は何も満足出来ていないまま。
とにかく、あんなに精神的に疲れたセックスは初めてだった。
肉体的に疲れたのは、サンジとのあの激しい行為が最高峰だったが………

「って、何今あんなの思い出してやがる自分!!!!!」

激しいツッコミを思わず自分に入れてしまったゾロだった。また壁に頭をぶつけたくなった衝動は、気合で何とか収めたが。
「………はぁ」
溜息をつき、立ち止まる。
ふと周りを見渡すと、とうに閉まった酒屋の前に積まれたビールケースが目につき、そこに腰を下ろした。
抱えた頭に巡るのは、今度は自己嫌悪じみた感情。
周りが殺気を感じる程に腹が立っていたのは、自分自身に対してだ。
何もかもがうまくいかない。自分の心すら把握できないもどかしさ。
そして。
(────おれ、もしかして男でしか感じなくなっちまったんだろーか……)
そんな事を考えてしまい、益々落ち込んでしまったのだった。




「おい」
ふいに声をかけられた。
自分に先程から向けられている、穏やかでない気配には一応気付いていたので、即座に神経を戦闘モードに切り替える。
目を上げると、見知らぬ男が5人。
何の用だと不機嫌に聞くと、下卑た笑いを浮かべた男の一人が、口を開いた。
「さっきテメェがヤった女なぁ、おれらのボスの女なんだよ。うちのボスが大層お怒りでなァ…、ちょっとテメェに痛い目見せてこいっておれら命令されちゃったワケ」
「は…ん」
なるほど。
何だかんだ因縁つけて、何も知らない旅人から身ぐるみ矧いで、小銭稼ぎでもしようという輩達らしい。もしかしたらあの女もグルかもしれないが。
『ロロノア・ゾロ』の名も、この島には届いていないようだった。腰の刀すら男達には「金目の物」と映っているようで、あからさまに欲を含んだ目で無遠慮に刀を値踏みするように見る態度に、ゾロは眉を潜めた。
「おれは今日は機嫌が悪いんだ。相手してやってもいいが、手加減はしねーぞ」
低く宣言する。
それに対する、男の一人の嘲るような笑い声が戦闘開始の合図だった。




(キリが無いな)
ゾロは舌打ちした。
因縁をつけて来た5人の男は、すぐに地面に沈めた。全員倒すのに、刀すら使わず一分とかからなかったくらいだ。
だが、ここは奴らのチームの縄張りらしく、すぐに仲間が現われたのだ。
倒しても倒しても、すぐに現われる仲間。雑魚とはいえ、こう数が多いと面倒だった。
最初は数を頼んで、圧倒的に有利な立場から、単身のゾロを嬲り痛めつける未来を単純に脳裏に浮かべていた男達は、思惑を外れてどんどん仲間を倒されるに到って、頭に血を上らせて、鬼気迫る攻撃になってきている。
ある程度の人数を片付けたら、戦意を失くすかと思っていたのだが、考えが甘かったようだ。
これ以上騒ぎになると、船の仲間に迷惑がかかるかもしれない(というよりむしろ、ナミが怖い)。
そんな風に考えたゾロは、どうしたら決着をつけられるだろうかと思案を巡らせたが。
その一瞬が、油断に繋がった。

「!」

飛んできた鎖鎌。
刃先は反射的に避けたものの、その長い鎖に胴体と右腕を巻かれたのだ。
普通の人間なら動きが取れず、そのあと袋叩きにされた事だろう。
だがゾロは普通じゃない。魔獣とまで呼ばれた男だ。
左手も足も口も動くこの状況に、大した危機感もなかったのだが、周りの男達は鬼の首を取ったように囃し立て始めた。
「よくやった、○○!(←鎖鎌の持ち主の名前らしい)」
「ザマーミロ、散々てこずらせやがって…!」
「殺してやれ!!」
周りの男共が騒ぎ立てる。対してゾロは、そろそろ刀を抜くかと左手を動かそうとした時。
「そんなんじゃ甘めェよ!犯してやれ!!」
そんな野次が上がった。
続いて、「そりゃイイや、ヤろーぜ」「おれらの便所にしたれ」などと、それを煽る笑い声。

ゾワッ……

その台詞の意味を理解した瞬間、ゾロの全身に鳥肌がたった。
「ふざけんな!!!!」
絶対ゴメンだ、つーかそんな馬鹿げた考え起こした奴らを叩きのめさなければ気が済まない。
そんな怒りも頂点に達したゾロが、左手で刀を抜いた。
その時。


「そーそ、それはおふざけが過ぎるぜ。ソイツ犯してイイのはおれだけよ?」
「!!!」


場に全くそぐわない、軽い声音。
嫌になるくらい聞き覚えのあるそれは、周りの男達からしたら突然の謎の闖入者に過ぎない。
「誰だテメェは!!」
「ある時はクソレストランの一流コック、ある時はそこのマリモの恋しいプリンス…」
「だ、誰が恋しい、だ!!! サンジてめェ、そこで何してやがる!!!!」
問い掛けに全然意味不明な答えを返す、突然現われた金の髪に黒スーツの男と、更にそれを怒鳴りつける、マリモと呼ばれた、自分達の獲物の男。
訳がわからずポカンとしているギャラリーを気にする風も無く、マリモと闖入者の会話は流れを無視してポンポンと進んで行く。

「迷子になった恋人をワザワザ探しに来てやったんじゃねーか。何遊んでんだよお前?」
「遊んでねーよ! テメェこそ、女ひっかけてたんじゃなかったのかよ!?」
「ん、楽しく今までお食事してきたとこだぜー。あーでも安心しろよ、えっちはしてねーから」
「そんなん聞いてねーよ!!」

無視されている。完璧に。
鎖鎌を持った男も、共に囃し立てていた男達も、ふたりの掛け合いをぼーぜんと見ていたが。

「て、てめェら、シカトこいてんじゃねーよ!」
陳腐な台詞を吐き捨て、男の一人がようやく立ち直り怒鳴る。それを契機に、他の男達も再びがなり立て始めた。
「はやくヤっちまえよ!」
「そっちの金髪も、えらい美人サンじゃねーかよ。一緒に可愛がってやろうかァ?」
その言葉に、つまらなそうに煙草の煙を吐き出したサンジ、
「あンな事言ってるケド。どーする?一緒に可愛がられてみるー?」
そんな事まで言い出して、ゾロが思わず、「アホかー!!」と怒鳴りつけると。
「だよなあ? じゃテメェも遊んでないで、早く片付けろよ」
別にそんなんでピンチに陥ってるわけでもなかろーが、と、とりあえず自分に向かってきた男を蹴り倒しながら、サンジは言い捨てた。
「言われなくてもわーってるよ!!」
一瞬の間で、鎖鎌を持つ男の懐へ飛び込む。
何が起こったのか把握出来てない男の胴を刀の峰で打ち、その衝撃に気を失った男から鎖鎌の柄を奪い取った。
そうして簡単に自由の身になったゾロは、くるーりと他の男達を振り返った。


「好き放題言ってくれやがった礼は、させてもらわなくちゃなあ…?」


今まで以上に鋭くなった眼光に、さすがの無頼な男達も震えあがった。





半ばキレているゾロと、楽しげに(いらんとゆーのに)加勢してきたサンジの力もあって、多数相手でも決着は随分早くについた。



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