「なあなあ、悪くなかったろ?」

「てゆかヨかったろ?」

「おれ、うまいだろーよ♪」

SEX後の相手への質問攻撃。そらーおれも自分でもどーだろーとは思うよ。
今思えばな。
だけど、浮かれても仕方ないシチュエーションだったろうが。
煙草をふかしながらおれはぶつぶつと考えていた。
場所は深夜のキッチン。皆はとうに寝ている。
二人だけで、ついさっきまで、甘い時間をここで過ごしていたんだけど…。

 

お互いの気持ちが判らないまま「片想い」だと信じて焦がれて、ひょんな事から思いが通じ合った恋人同士(はは、少女マンガみてーな恋だ)がだぜ。
一歩踏み出して、初めてのアレ、という状態に本日目出度く相成りまして。
思えば長い道のりだった(しみじみと)。
男同士だし、絶対大変だと思ったんだ。うまく出来ねーかもなんて心配して、このおれが両思いになったってのに、なかなか手を出せなかった程、こっちも自信無くて。
女の子相手なら、すこぶる自信あるんだけどな。何せ、男は相手にした事がかつて一度も無いし。
そもそも、テク以前の問題で、どっちがどっちヤるかってのも問題だったんだ。
二人とも、当たり前だが、下…ヤられる側はお互い遠慮したかったからなあ。

ここでも、ちょっとモタついたんだよな、先に進む上で。

好きならばどっちでもいーじゃねーかって気はするんだが、今までの女の子相手のSEXは、男としてリードする立場をしてきた以上、こういう事態での未知との遭遇はやっぱ少し気が引ける。
出来たら遠慮したいつーか、自分のペースを守りたいじゃねーか。まあそれはゾロも同じだったろうけど。
そんで、ちょっとモメたりもしたわけだ。
でも、力では向こうが上だが、そこはホレ、「愛v」があるから、力ずくなんてしてこなかったし。
有り難い事に。
そうなると、こっちが断然有利。口八丁手八丁とでもいうか、勢いで捲し立てて丸め込み、 一気に押し倒して。向こうが流されるのをいい事に、有利な立場を勝ちとった。

 

で、こっちも実は、うまく出来るかどうか、ドキドキな状態で事を運んだ訳なんだけれど。

これがまた、相性が良かったのか知らねぇが、思ってたよりずっとすんなりと、イイ感じで最後まで行った。意外にも。
自分だけが気持ちイイなんて事は無いよう、かなり気を使って、丁寧に丁寧に相手の身体を探り、鶏がら煮込んでスープを取るごとく根気良く、時間かけて事に及んだのが良かったかな。
まあとにかく、最高にバッチリなアレだったわけだ。
あのゾロが、最初は必死で堪えてたみたいだけど、噛みきれない声上げておれにしがみ付いてたんだぜ。
後ろに挿れた時はさすがに死にそうなツラしてたが、あまり動かず、見つけ出した全身の性感帯への刺激を、シツコイくらいに施してるうち、身体も段々慣れてきたみたいで。
最後には、おれの名前呼んで達くくらい、無我夢中というか、前後不覚というか。そんな状態に追い込んだ。
…追い込まれたのは、おれもおんなじだったけどな。
あんなにのめり込んだのは、初めてだった。


そんな最高なひとときの後だ。
おれが浮かれてもしょうがねえだろ? 下手したら傷付けるかもとか、もうさせてもらえないかもとか、するまでは色々悩んでいたんだから。
そんでつい、あの質問(てゆーか確認)攻撃だ。
まあ、まさかおれも、ゾロが「良かったv 最高だったぜサンジv」なんて言うとは、全くもってコレっぽっちも思っちゃイナイので、そんな質問されて、照れて困るゾロが見てみたかっただけなんだけど。
否定はできねーだろーしな。あんなに乱れて、何度もイってて、全然感じなかったなんて言ったらオロスぞ。
そんな事思いつつ、ロクに後始末もしないままゾロにくっついて、ピロートークよろしく、こんな事聞いてたんだけど。

そしたら、突然怒り出して殴られた。
照れてるなんてもんじゃない。本気だ。本気と書いてマジだ。歯が折れるかと思ったくらいだ。
甘い余韻も吹き飛ばす衝撃。
呆然とするおれを残し、ゾロは服を引っ掴んで飛び出して行った。

 

ええ!?
何、そこまで怒る程嫌だったのか、こーゆー事聞かれるの??

 

しばらく呆然と、まっぱで座り込んでいたが、このままボケててもどうしようもないので、とりあえず服を身につけ、ほっとくと腫れそうな、殴られた頬を冷やす。
それから煙草を一本ふかし、やっと落ちついてきた。
いや、落ち着いてきたというより、腹立ってきた。
確かに、おれの言葉も不躾というか無神経というか、情緒もへったくれも無い物だったけどさ。
勿論、女性相手なら言ったりしない台詞だ。
だけど、ゾロは照れてる時とか困ってる時とか、エライかわいいというか、イイ感じなんだよな。
そういうのが見たくて困らせたくなる。そんでついやっちまう。
だから、おれも悪いのは確かだけど。
ここまで思いきり殴られる程マズい事だったか?
クソ。
半分程まで減った煙草を、灰皿に押しつけて立ちあがる。
飛び出して行ったと言っても、ここは狭い船の上。逃げ場なんて無いも同然だ。すぐ捕まえて、問いただしてやる。
何でここまでされなきゃならねーのかって。
無神経かもしれねー台詞だったが、少なくとも嘘じゃねーだろ、イイ思いをお互い出来たのは。


案の定、すぐにゾロは見つかった。
バスルームから漏れる、シャワーの音。皆は寝ているし、他に使う奴はいる筈もない。
ここに飛び込んだって訳か。隠れるつもりはねぇらしいな。
扉のノブに手をかけると、やはり鍵が閉まっている。
「ゾロ」
「…………」
シャワーの音のみしか聞こえない。幾らなんでもこっちの声は、中に聞こえてる筈なのに。
無視。
やっぱ怒ってやがる。




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