倉庫は、昼でも薄暗く、秘密の逢瀬にはうってつけの雰囲気だった。

 

「……ゾロ……」

囁くサンジの頭には、しつこいようだが猫耳がちょこんと、可愛らしく(?)付いている。シャツを捲り上げ、舌先で胸を辿られる擽ったさに、ゾロがその頭を押して離そうとすると、指先にその猫耳が触れた。
「うわ……」
ぴくん、とサンジの身体が反応する。
どうやら、こんな訳わからん出来物の耳にも、神経はあるらしい。それも、かなり敏感なようだ。
面白くなって、擽るようにサンジのその耳に触れていると、「やめろー」と叫びながら真っ赤になって身体を離す。
「何だよ、そんなにカンジんのかよ、猫耳ってのは?」
優位の笑みを見せ揶揄うゾロに、腹立だしさと羞恥が入り混じり、その身体を強引に押し倒した。
「テメェもそのうち生えてくんだから。そン時に、嫌って程判らせてやるさ」
悪戯されないよう、ゾロの手首を押さえつけて、唇を合わせる。その強引さに、不満気に合わせた唇の中でもごもごと何か言っていたゾロも、やがておとなしくなっていった。
「は……」
角度を変えながら何度も施され、口端から唾液が零れる程の深い接吻けに、息を乱される。苦しさを感じて藻掻くと、サンジが漸く唇を離した。
「おれとしてはァ、キスぐらいでこんなにカンジる奴のが、すげェと思うぜ?」
未だ吐息が整わないゾロを見下ろし、その足の間に自分の膝を割り込ませ、そこに当たる中心の反応を揶揄う。
余程さっき揶揄われたのが悔しかったらしい。
「ガキが………」
呆れたように呟くが、身体の反応は確かにサンジの言う通りで、言い訳も出来ない。
「ココ…キツいだろ?」
そうゾロの耳元で囁いて、服の上から円を描くように中心を嬲る。
軽い、力の入っていない掌で撫でられる感触が、もどかしくすら思い、身を捻る。焦らすように触れられるくらいなら、何もされない方がマシな気がした。
「そンな顔すんなよ。ちゃんとしてやるから」
焦れた様子を見せるゾロに、含み笑いしつつ、その言葉通りの行動に移る。
「……ッ、!」
ゾロの下半身を覆うボトムをずり降ろし、そのまま下肢へと顔を埋めた。
まず先端をちろりと舐めてから、ゆっくりと口に含む。舌と上顎で押しつぶすように、強めに刺激すると、ゾロの背が大きく仰け反った。

「う、……ぁ!? あ、ちょっと待て…ッ!」

ゾロが慌てたように、烈しく身を捻って抗った。
「なんだよ?」
身動きされたせいで、一瞬口に含んでたモノを喉につまらせかけたサンジは、不機嫌そうに顔を上げた。
「何か…ヘンだ……っ」
頬を上気させ、戸惑ったような表情をサンジに向けている。
「変? 何がだよ」
「し…舌が、……感触が」
口篭もっているゾロの言う事がよく判らないが、舌がどーやらおかしいらしい。
自分の人差し指を舌で舐めてみると。
「…うわ、確かに変だな……」
ざらざらしている。細かい繊毛というか、突起が無数に生えているような、奇妙な感触が指先に伝わる。
いつもの、柔らかく湿った自分の舌とは違う。
固くザラつき、とげとげしさすら感じるそれは、まるで本物の猫のもののようだった。
「そーいやチョッパーが、五感が変化する場合があるとか言ってたなァ。こりゃ確かに変化するわ。舌の神経もおかしくなるよなー」
身体的にこれだけ奇妙な病症が現れるとは。その意外さに感動すら覚えてしまいそーだなどと思いつつ、自分の舌の感触が面白くて、何度も指で確かめる。
「ばか、テメ、コックが味覚の変化なんかしたら……」
「あーでも、一週間で治るんだろ? そんくらいなら別に大したことねぇよ。料理ン時も、調味料の分量とかは身体が完璧覚えてるし。だいじょーぶだろ」
慌てたようにゾロから掛けられた言葉は、乱暴な口調ではあるが、自分を心配したものだという事が判り、サンジは嬉しくなる。
「しかしさーゾロ。さっきキスしてた時気付かなかったんか? コレ」
舌を絡める程深い接吻けだったというのに。舌が鈍感なのか、それともアレがやたら敏感なのか。さて。
そんな事を考えつつ、行為を再開する。
「ぅわっ、サンジ、待てってば……!!」
再び下肢に顔を埋められ、ゾロが制止の声を上げるが。立派な耳が頭にまで付いてるくせに、完全無視して舌を絡めてくる。
「ぃ……、っ…!」
ざらざらした固い、いつものとは全然違う感触に戸惑う。強く舐め上げられると、敏感な部分の神経は痛みすら覚える程だ。なのに。
「……ぅ……あ、ぁ……ッ」
強すぎる刺激が痛覚に響き、苦しさすら感じるけれど、それを悦楽として捉える神経も確かに存在していて。
訴える痛みとは裏腹に、サンジの口内で、限界に向かって追い上げられて行く。
サンジはサンジで、口での奉仕くらいでは滅多に声までは上げないゾロが、苦しげに喘ぎを零している様に煽られて、筋を舐め上げたり、先端を抉ったりと、ますます激しく舌での悪戯を繰り返す。

「あ……───ッ!!」

痛みと快楽が頂点に達し、ゾロはその口腔に絶頂の証を放っていた。

 

 

「…さて、と」
濡れそぼったソコから顔を上げたサンジが、弛緩したゾロの足を更に広げて、自身を受け入れさせる為に奥を慣らそうとした時。

「…………あれ…?」

ぐらりと、激しい眩暈がサンジを襲った。
あれれれ?と意識が纏まらないまま、ゾロに覆い被さるように崩れ落ちてしまう。
「サンジ!?」
慌ててゾロが呼びかけるが。サンジはくったりと身体を預けたまま、起きあがる事が出来ないでいた。
「……にゃに〜〜??@@;」
ぐるぐると視界が回る。貧血の症状に似ている気がする。
にゃんこ菌のせいで、体調が悪化してきたということだろうか。
「こ、これからってトコで〜………」
しばらくしたら眩暈は収まってきたが、とてもゾロに挿れて、がんがん攻めたてる行為は出来そうにない。アレはアレで、かなり激しい運動だし。腰振ってる最中に意識を失いそーだ。それも情けなすぎるし。
「うぇ、クソ、ちくしょ、ここまで来てこんなんアリかよー;;;;;」
身体はふらふらしてるが、昂ぶった精神が不満大爆発状態で、泣きたい気持ちで悔しさを訴える。下半身だって、それでもまだ熱を持った状態なのに。
「……………」
黙り込んで、自分の身体に凭れているサンジの様子を伺ってたゾロが、その場にサンジを横たえた。
「無理すんな。こんなの、いつだって出来るじゃねェか」
「今欲しいんだよ!! おれだってヨクなりてーし!!」
諭すように言うゾロに、半泣き状態でそう怒鳴ったら。
「ああもう、お前じっとしてろ。……コレで我慢しろ」
…と。
「え?───ッ!?」
次の瞬間、サンジの口から、うろたえた声が零れた。
ゾロが、横たえたサンジの下肢を顕わにし、まだ硬さを保っているソレを口に含んできたのだ。
「ゾ、ゾロ……」
ゆっくりと口腔深くまで導かれる。温かく湿った感触が、ダイレクトに自身から脳へと響いた。
生き物のように舌が蠢き、ゆったりと性感が高められていく。
(う、うわーちょっとカンドーかもー……)
ゾロからの奉仕は珍しく、サンジもあまり無理強いした事はない。何だかんだ言いつつ、受け入れる側の相手の負担を考え、大事にしてきたのだ。
なのに。
サンジを気遣ってか、いつになく積極的なゾロに、一瞬だが体調の悪さすら忘れて、その身体を再び押し倒したくなったが、哀しいかな体力がついていかない。
代わりに、自分の下肢へと顔を埋めるゾロの頭へと手を伸ばし、愛しさを込めて髪を撫でてみた。
しかし。
「……あ?」
指先に、違和感を感じ、まじまじと視線をそちらへ向けると。

─────猫耳発見。

とうとうゾロも発症し始めたらしい。その頭には、あの可愛くも奇妙な耳がしっかりと存在していた。
(…舌も変化すんのかな……)
そんな事を考えながら、口内に含まれている自身に神経を集中させるが、まだそこまでは変化していないらしい。
ちょっとその差を感じてみたかったサンジは、若干残念に思いながらも、確かな快楽に満たされて行く。
「………は…」
ぬるりとした柔らかい感触に、ゆるやかに高められながら、サンジはその感覚の波に身体を委ねていった。

 

 

「…で、何でサンジ君やゾロまで感染してるの? 粘膜感染なのに」

愛撫のみ本番無し、しかしそれなりに満たされた行為の後、体調の悪化したサンジをとりあえずキッチンに運んできた所、そこで病に関する資料を調べていたナミに、そう見咎められた。
「…………」
「ええと、……はは、まあいろいろと……」
うまい言い訳が見つからず、引きつった笑いを顔面に貼りつかせたサンジと、黙り込んでしまったゾロに対する、ナミの白い目が痛い。
「…まあいいけどね。深くツッコまない事にするわ……」
そう言ってすぐにキッチンを去ったナミの背を見送り、二人は溜息をつく。
「……ナ、ナミさんに、ルフィにナニかしたとか、3Pしてたとか誤解されちゃったかな………;;」
「いっその事、お前が実はホモ専門のキス魔っつーコトにしとけよ、サンジ」
酷い言われようだ。普段なら頭に血を上らせて掴みかかるところだが。
血が上った瞬間、立ち眩んでまたへろへろとその場へと座り込んでしまう。
「……やっぱ体調さいあく……」
「だから無理すんなって言っただろーが……」
そう言って覗き込むゾロの頭にも、にゃんこ耳。尻にはながーい尻尾。
「…てめー、具合悪くねーの?」
普段とそんなに様子が変わらないゾロに、サンジがそう問いかけると。
「ちょっと悪い気するが、そんなに酷くねェな」
個人差があるのだろうか、あまり病状が出ていないゾロは、外見は猫化してるものの、辛そうには見えない。それとも、痛みに慣れている身体には、この程度の具合の悪さは大した事ないとでもいうのだろうか。
「化け物め……」
思わず悪態をついた時。

「肉ー!! メシーーー!!!!!」
船内全体に響き渡るような声で、いつもの船長の定番台詞が響いてきた。

「…ルフィが起きたみてーだな。それも、すっげー健康そうだぜ?」
男部屋のある方角に目線を向けて、ゾロが顎をしゃくる。
「………やっぱ、他人に移したのが効いたのか?」
そう呟いてはみるが、ゾロに移したはずの自分は、治る気配は全く無い。

不公平なり、にゃんこ菌。
てゆか、アイツもやっぱり化け物なだけかな……。

そんな台詞をぶつぶつ呟きながらも、サンジは立ちあがって冷蔵庫を探り出した。
「クソ、にゃんこが何だ体調が何だ!!! 思いきり腕振るってやる!!」
朝メシ抜きのルフィの為にもな、負けねーぞ!…と。
ヤケクソのように怒鳴り、食材片手にまな板に向かうサンジは、どことなく嬉そうな表情をしているようにゾロは感じた。

 

 

「ルフィには甘いよなァ」

サンジには聞こえないよう一人呟く。
お互い様かとも思いながら立ち上がったゾロは、未だ喚いてる船長の様子を見に男部屋へと向かった。
 



猫舌プレイをやりたかっただけとも言う(吐血);
猫耳サンジ、かわいーだろーなーと妄想。
ゾロは正直、猫耳とか可愛い系は似合わんと思ってます;
ああでも嫌がるゾロに無理矢理猫耳つけたりするのは萌えます。
んで、つけてみたら結構可愛いかもしれない(笑)



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