そんなこんなで、次の日の風呂タイム。



「はーやーくー♪♪」
先に湯船に浸かってるサンジから、実ーに楽しそうなお声がかかる。
「……………」
洗面所で固まってるゾロ、その声音に、これまた実ーーーに嫌な予感がするが。
(約束、したもんな………)
一ヶ月はしないって、言ったのだ。そう約束したのだから。
そう何とか自分を納得させ、服を脱ぐ。
この時点で、脱衣所の外の廊下についているカメラによって、『二人で浴室に入るの図』が撮られているのが情けないが。
(さっさと入って洗って、さっさと出よう………)
服を脱ぎ、腰にはしっかりタオルを巻いて、サンジの待つ風呂場へと入る。
「いらっしゃーい♪ サービスしましてよ旦那さまvv」
「死ね」
ふざけた言葉をうれしそーにかけるサンジに、冷たく一言返し。
さてどーしようかと湯船を眺める。
(二人で入るのはやっぱ無理だしな…交互じゃねーと)
一人なら決して狭くはない湯船なのだが、湯船に大の男二人で入るのは無理だ。
…いや正確に言うと、無理ではないかもしれない、が。相当密着する必要がある。
「先に頭洗う。交互で入るぞ」
「え、一緒に浸かろーぜー」
「広さ見て言えアホ」
と、シャワーの蛇口を捻ろうとしたゾロに。
「あ、待てよ。おれ結構もうあったまったからさ。お前湯船入れよ」
そう言ってサンジが湯船から上がる。
それを見て、空いた湯船にゾロが片足を付けた時。

「うわッ!!」

ふい打ちを食らい、体勢を崩した。
一旦湯船から上がったサンジが、背後から素早くゾロの腰に腕を回し、そのまま湯船に再び入り込んだ…というより飛び込んだのだ。ゾロを巻き込み引きずり込んで。
バシャーン!と、湯の飛沫が上がる。
その飛沫が目に入り、「サンジ!」と、怒りと焦りを含んだ声でゾロが叫ぶ。
視界はまだ閉ざされているが、恐らく今の状態は、湯船に浸かるサンジの腰の辺りを自分が跨ぐ格好で。
そのまま唇に当たる柔らかい、慣れた感触。キスされてるのだと、判断する。
不安定な体勢にバランスがまた崩れ、サンジの腿の上に完全に座り込んでしまった。
「────!」
跨いだ股間に、当たる違和感。
「てめ…」
僅かに離れたゾロの唇から、完全にお怒りモードな声が漏れる。
「……何で勃ってんだよ」
密着した腰の違和感は、アレだ。
これも、慣れたといえば慣れた感触。…慣らされたと言うべきか。
「勃ってんのに理由って……いっこしかナイじゃん…」
確かにそうだ、とゾロは思ったには思ったが。
「……カメラある所だと嫌だからしない、って約束だったよな」
「ここにはカメラはねーよ?」
返された言葉に、ぐっと詰まる。
「一ヶ月しないって言ったろ!」
「おれは言ってないもん」
「へ理屈じゃねーかよ!!!!」
「しー…黙れよ」
そう言って、サンジがゾロの耳元で小さく囁く。
「…ここのすぐ外の廊下には、カメラとマイクあるんだぜ。最近のマイクってさ、すっげー性能いいらしいから、ここであんまり騒ぐと音拾われるぞ」

謀られた──────

慌てて立ち上がり逃げようとするが、その腰を押さえられて、いきなり股間を掴まれる。
「っ……!」
マイク云々言われて、叫ぶ事も出来ず。
(このアホ!!離せ!!!)
耳元で出来る限り小さく叫ぶ。小声な時点で叫びではない気もするが。
勿論そんな程度の非難で、サンジが怯むはずもなく。
ゾロの下肢を掴む手を、揉むように動かし始める。
「カメラが無いのって、こことトイレだけなんだよな……。トイレでやるよりかはよくねぇ?」
「よくない!! やめろ!!」
与えられ始めた感覚と戦うのに必死なゾロの叫びに対し、サンジが言う。
「大体、一ヶ月って……オトナな男の身体考えろよ。そんなに溜めとけねーよ。どっかで出さなきゃ…。お前どーするつもりだったんだよ」
「……………」
「カメラある所でひとりえっち出来るタイプでもねーよなぁ…」
含み笑いが腹ただしい。
「トイレとかで処理すんのかな。それとも我慢に我慢の挙句夢でイッちゃうとかー……」
おれ居るのに、そんなのって寂しくない? と、耳元で囁く。
「テメ……」
下肢で遊ばせる片手と、腰に絡めながら背筋を愛撫するもう片方の腕。
首筋を下から舐め上げられる。

「…ぅ…」

逃げようとする身体は、どこかに無意識の期待があるのか、思うように動かない。
ただでさえ、この腕に慣らされた身で。サンジもゾロの身体は知り尽くしているし。
「ん………」
再び唇を捕らえられ、重ねられたと同時に絡められる舌。
痛いくらい激しく絡められ動かされ。その動作について行く事も出来ない。
音を立てて弄ぶ舌に、翻弄されるだけになる。
湿気と熱気が充満する浴室で、下肢をまさぐられ、口内を貪られ、呼吸すらままならず。
次第に思考がぼやけてゆく。
抵抗しようと固くなっていたゾロの身体から、次第に力が抜けていくのが、密着したサンジにも伝わる。
サンジの心の中で、ガッツポーズが決まる。ここまで来たらもう大丈夫♪…と。
掌の中のゾロのモノも、かなり追い詰めているし。
「サ…ンジ、も、離せ……」
「なに、まだ嫌だっての?」
もう大丈夫だと思ったのに、全く頑固だなーと思い問い返すと。
「………こ、こじゃ………」
「え?」
「っゆ、…が…」
自身を激しく扱かれる刺激に、荒く跳ねる呼吸から、何だか必死で言葉を紡ごうとしているゾロ。
「ゆ????」
「……せん、たくに、使うんだろっ…!」
せんたく。……洗濯。湯。
(あ、そーゆー事か☆)
欲望で頭がピンク色というか、目の前のゾロの事しか考えてなかったサンジにも、要約合点が行った。
つまり旦那さんの言いたいのは、この湯は、次の日洗濯に使い回すから、ここじゃ出したくないと。

「……………」

ぶはっとサンジが吹き出す。
「律儀すぎ、お前〜〜!!」
こんな状態でもそこまで考えるか。節約生活、やるといったら確かにとことんまでやるつもりらしい。
「う、る、さい…ッ!」
跳ねる言葉でゾロが抗議する。
企画に応募したのはてめーだろーが、真面目にやる気あんのか、と怒鳴りたいが。
笑いながらもサンジの手はまだゾロの自身を握っていて。
その感触だけで身体は熱く震える。
サンジは僅かに考える様子を見せた後、ゾロを引きずるように共に湯船から上がった。

「外ならいいんでしょ?」

と、ゾロを洗い場の壁に寄りかからせ、立たせる。
途端、ひゅっとゾロの喉が鳴り、肩が跳ねた。背に感じた壁の冷たさに、身体が驚いたらしい。
「ごめんなー。寒いだろ? こーゆー時じゃなければ、シャワー出しっ放しにして、身体温めてやるンだけど」
今無理だから、そのかしおれが暖めてやるよ、と笑う。
「ほんとはさ、こういうのも試したいんだけどー…」
シャワーの蛇口を最大まで捻り、ゾロの硬く勃ち上がった自身へと直に、その水流を当てる。
「ぅあ…っ!」
自身を無数の強い湯の矢に愛撫され、予想外の刺激とその痛みに近い快楽に、思わず嬌声を上げてしまう。
一瞬後に、マイクの存在を思い出し、慌てて口を手の甲で押さえ、歯を噛み締めた。
(…遅いと思うんだけどなー)
悪戯っ子のような表情を浮かべたサンジは、ゾロの仕草を楽しみ、その一瞬でシャワーを止めた。
「こーいう小道具系もさ、楽しいんだけどー。節約中はちょっとコレでイかせてやれねーんだよなー。また今度な」
「……ざ、けん…な…!!」
いたぶられる屈辱と、それでも感じる快楽に、上擦る声。あくまで小声だったけれど。
「怒った? ごめん」
優しくキスを送る。
性格も違うが、セックスの価値観もとことん違っていた二人だから。
サンジはこういう事を、スキンシップの延長線上で楽しんでいる。
いろんな事に挑戦したり、言葉を様々に使い、自分も相手も高めてみようとする。
チャレンジ精神が旺盛というか何というか。
対してゾロは、セックスに対して古風というか、どっか閉鎖的というか。
(別に嫌いな訳じゃないと思うんだけどー、淡白なんだよなあ)
自分がやられる側だったとしたら。まぐろってたら、ゾロはきっと手順通りなえっちしかしてくんないだろうなーとサンジは思った事もあったり。
女役はやった事ないんだけど(奥さんなのに……)。
いや別にゾロがやりたいって言えば、抱かれても全然いいんだけど。照れでもあるのか旦那様全然そんな事言い出しそうにないし。それに─────

ゾロの乳首を舌で嬲り、股間を割り込ませた腿で突き上げ刺激しながら、上目遣いにその顔を眺める。
真っ赤に上気した頬と、固く寄せた眉の下で固く瞑られた瞳。
少し泣きそうに歪められた表情。


普段ポーカーフェイスで、男らしくて、はっきり言ってめちゃくちゃカッコイイ旦那様。
その男がこんな表情見せるなんて、おれ以外誰が知ってる?


(やられる側よか、こっちのが楽しいもんねv)
おれってもしかしてちょっとサド?とか思いながらも、実に楽しく性感帯を苛め続ける。
必死で声を殺す様が愛しく楽しい。
浮かれたまま、指を背後に回し、尻の谷間を辿る。秘孔近くを、軽く触れたまま何度も辿る指に、あからさまにソコの筋肉が収縮する。
サンジの腿に甚振られている自身も、限界を訴えて震えるのが分かり、ゾロは俯いて唇を噛み締めた。
口を開けたら最後、どんな声が出るか判らない。
「…………っ……」
膝が震え、力が抜けてそのまま崩折れそうになる。
仕方無いから、目の前のサンジへと縋った。
「……欲しくなった?」
またそういう事を言う……答えられないと判っていて、と、ゾロは憤るが。
答えなくてもサンジは楽しそうだし、やるこたやるし。要は、強がる自分を見て楽しんでいるんだろうとゾロは思う。
焦らされるのはどうしても慣れない。絶頂が欲しいけど言えない。
サンジは全部判っているんだろうと癪に障る。
やはりここでも何も答えず、その代わり、縋る腕に力を込めた。



「く…ゥ……………!」
歯を食い縛っていても、小さく呻きが漏れる。
熱の解放を求める自身への刺激を止め、秘孔へと行き成り複数の指を侵入させたサンジのせいで。
「サンジ………っあ………」
「悪ィ、もう少し待ってて……」
受け入れる器官を持たない男の身体は、体内に感じる個所はあるとはいえ、その刺激では簡単に達する事が出来ない。むしろ感じるのは違和感と、疼痛。
しかしそれすら、焦れる身体は快楽として感覚を捕らえ始める。
サンジはポイントを微妙に外して弄ぐっている。
感じさせるというより、筋肉を解す行為。ソコにサンジを迎え入れる為の。
「おれの、で、達かせてやるから」
「も……やめ」
もういい、と。小さい言葉。
色っぽくもない、でもそれは彼なりの精一杯の誘い文句。
もういいから、早くしてくれという意味の。
「ん」
サンジが頷いて、ゾロの下肢に、深く腰を割り込ませる。壁と割り込んできたサンジの身体の間で、ゾロの足が宙に浮いた。
サンジが自身を片手で支え、垂直に向けて、浮いたゾロの下肢へと宛がう。

「あ……ぁぐッ───────!!」

挿入に、悲鳴が上がる。
受け入れる直前まで、実を言うと「絶対声は出さない」と心に決め、耐えようとしていたのだ。が、しかし。
慣れない体勢、そして自分の体重が掛かる事で、いつもより速いスピードで入ってくる凶器に、抉られ、耐えきれず。
「うぁ……ああッ」
理性ではもはや押さえられない、悦楽を含んだ悲鳴が何度も浴室に木霊する。
サンジが深くまで突き上げた時、ゾロが首を振り、一際高く声を上げた。
同時に自身に纏わり付く肉壁が激しく収縮し、サンジも思わず喘ぎを漏らす。
しばらく後、強張っていたゾロの身体から、くたんと力が抜ける。
「あ……ゾロ、も、イっちゃった…?」
焦らされていた身体は、あっけなく絶頂を迎えていた。
腹に感じる、生暖かい液体の滑り。絶頂の証の。
それを指で掬いながら
「おれまだだよ……も少しつきあって」
言うと同時に再び突き上げる。
「───!!!」
ぐたーっとサンジに凭れていた身体が跳ねあがる。
「この体勢、ちょっと辛いんだよな……うまく動けなくって…」
なかなかイけないかも、なんて恐ろしい事を言う。
確かに立ったままでは動く方も不自由が多いだろうが、この洗い場は狭い。
寝転がっての「運動」なぞしたら、がんがん壁に頭をぶつけること間違い無しだ。
じゃあ、サンジを早く達かせる方法は……。
朦朧としつつも、自分の為にゾロは必死で考える。
「だっ………出せっ、手でやったるから……っあ、!」
手での方が断然早いと、ゾロが言うが。
抜く気配も見せずに腰を揺さぶられ言葉が乱れる。

「やだ。中で達きたいv」

ゾロに向かいにっこり笑った、天使のような綺麗な顔。
しかしその口から放たれた言葉は、悪魔の宣言であった。



しばらくして。
浴室の外の廊下に設置されたカメラは、浴室から出てきた嬉しそうな奥さんと、その奥さんに抱かれるように引きずられる、半ば気を失った旦那さんもばっちり映していたのであった。





後日。
その場面はしっかり、『2時間もの間、共に風呂に入っていた二人……v』との、ハートマーク入りのテロップまで入れられ、テレビでお茶の間に放映されてしまった。
更に、VTRを見た、その番組の司会をしているお笑いコンビの
「2時間!? 何やっとんねんこの二人!」
「何って、ナニに決まっとるがなそんなもん!!」
というツッコミまで入っていたのであった…。
電気代節約の為、ゾロがそのテレビを見る事が無かったのが、唯一の救いである。

ちなみに、声もばっちり漏れていて、それはさすがに全国ネットで流される事は無かったが、音声編集担当者を大分困らせた(つか、悶えさせた)との噂。




ゾロの苦労と後悔ははまだまだ続く。
様々なハプニングとサンジの悪戯(?)を潜り抜け、賞金を手にするのは、それからまだ遠い未来の話であった。




てなわけで馬鹿夫婦でし太…。
コ●リコの黄金伝説の素人参加型企画、節約夫婦。
昔、そーゆー企画があったのです。
風呂にも一緒に入っていました(笑)
今は芸能人さんの節約レシピ企画へ変化してますが。
まんま企画パクリ話…なんだけど、私的には
昔ウ●ナンのホントコでやってた貧乏カップルが
結婚資金を貯める為、節約同棲してた企画を
モデルにしてるつもり。あっちのが先だしなー。

果たしてカメラある寝室で、奥様が旦那様を
今後襲う事があるのかどうか。
そしたらそのVTRはまさに裏流出ですな…。


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