「解けよ、これ!!!」
「やだよ。解いたら逃げるじゃん」


何を当たり前の事を、と旦那さんは激昂するが。だからこそ奥さんは解く気は無いのだと判る。
何とか自力で、後ろ手に縛っている帯を解けないかと力を込めるが、手先はやたら器用なサンジがうまいこと複雑な結び目を作っているらしく、また帯の妙な伸縮性に力を吸収され、 それも適わない。
腕の解放を諦め、とりあえずサンジが近寄れないよう、蹴りを繰り出すが。

「!!」

不安定な体勢からのそれを軽くかわし、逆にその足を掴まれる。
「うわ!」
ころんとそのまま布団に転がされ、サンジが圧し掛かってきた。
「ちょっとだけ…ね」
そう言って、強引に唇を塞いでくるサンジに文句言ってやりたいが、深く合わせられた口の中で、もがふがと言葉にならない。
いい加減にしろと、手の自由さえあれば押し退けたくなるくらい、深く長く続いた接吻けに、半ば意識の飛んだ旦那さん、どーでもいいような気になってくる。
こっちの意志を無視して、サンジのペースで好き放題されるのも、大分慣らされているし……
だけどこのままなし崩しにずるずるヤられんのも、やっぱり腹立だしいので、唇が離れた時に、皮肉たっぷりにこう言ってやった。
「…てめ…、ンなに自分のモンに自信ねーの?」
道具なんかわざわざ買ってじゃねーよと。
それを聞いたサンジ、一瞬きょとんとゾロを見て、次の瞬間「可愛くねー」と呟き笑った。
「おれのモノがどーだかは、おれじゃなくてお前が判断してくれよv」
コレと比べてさ、と。

「っ!!」

サンジがその玩具に舌を這わせ湿らし、ゾロの下肢に押し付けてきた。
「いっ…やめ……!」
弾力はあるとはいえ、無機質なゴムのそれを、ゾロの身体は拒む。
「んー、いきなりは無理かな」
先程までサンジのモノを受け入れていた秘孔は、その行為により解れてはいるのだが、何より ゾロがそれを受け入れたくないらしくて、入口の筋肉をぎゅっと収縮させて侵入を許さない。
強引に体内に挿入させようとすると辛そうな声が上がるので、一旦サンジは、諦めてそれを置く。
「おれのよか細いんだけどなー」
直径4cm足らずのお道具、ちなみに色はかわいいピンク色である…。
「そういう問題じゃない……」
気持ちの問題なのだと。
サンジのなら、もはや意識せずとも、押しつけられた瞬間に、身体が余計な力を逃がして受け入れる。
感情が受け入れているか拒んでいるかで、無意識の反射すらも全然変わる事を、どうやらサンジは判っていない。
言うのも悔しいから言わないけど。
とりあえず、玩具を置いたサンジに安心し、強張っていた全身から力が抜ける。
そこにまた接吻けられ、背中に腕が回されて密着する。
身体中に感じる温かさが心地良い。

(……普通にやってくれりゃいいのに…)

そんな事を一瞬思い、それを頭で反芻して意味を改めて考え、赤面する。
それって、普通にだったらこうされたいのかと。
更に考えはそこから、サンジに結局好きにさせてしまうのも、自分も無意識に望んでるんだろーかという思考にまで到達してしまい、内心わたわたと慌ててしまう。

「…ゾロ??」

行き成り腕の中で、赤くなったり首を振りながら「別にそんな…」とかぶつぶつ言い出したゾロを、サンジが訝しげに覗き込む。
「なぁに考え事してんだよ、お前」
余裕だなーと、ちょっと面白くなさそうにサンジが呟いた次の瞬間。

「や…っ!」

突然前触れも無く、胸の突起の片方を甘噛みされて、ゾロの切羽詰った声が漏れた。
性感帯への直接の強い刺激に、無意識に身体は仰け反り逃げようと動くが、抱き締めてくるサンジの腕に阻まれる。
先程まで抱かれていたゾロの身体が、やたらと過敏になっているのを判っていて、敢えて強い愛撫を施すサンジにやめろと伝えるが。
「い・やv」
顔を上げにっこりと一言、そりゃもう可愛く言ってのけて、すぐにまた紅く膨れたゾロのそこに舌を絡め蠢かす。
「………ぅ、あ…」
普段なら、口を手で押さえて声を殺す事も出来るのに、戒められた腕ではそれも出来ない。
布団の上で、下半身が悶えるように動き、早くも自身へと熱が集まるのを感じる。
「……あ……」
勃ち上がったその箇所を、ゆっくりと指を絡めて軽く扱かれ、浅い息と共に喘ぎが零れる。
しばらくそこで、撫でたり軽めに扱いたりと遊んでいた手が離れ、サンジが身体を起こすのが 気配で判り、ゾロは目を開けた。
「サンジ?」
自分も抱き起こされ、座ってるサンジの横に移動させられる。
「おれのも、してくれる?」
主語は無くとも、サンジの言いたい事を理解したゾロは、
「手、使えねーよ」
と反論する。言外に「外せ」との意図を込めてるのだが、その願いは聞き入れられなかった。
「口だけでいいから」
「お前、それでイけんの?」
「んー、やってみなくちゃわかんない」
とりあえずこのままやれって事か、と溜息をつく。
後ろ手に縛られた不安定な体勢のまま、身体を倒す。手で支えられないので、正座のまま前屈してるような姿勢になって、結構苦しい。
少し楽になるよう、サンジの腿の上に肩を預けるような格好にして、横側から唇を寄せる。

「ん」

口に含み、まず軽く先端を吸い上げた瞬間、サンジが小さく呻いた。
それを上目遣いに少し見て、ゆっくり口腔の奥まで導く。舌先で強めに擽ったり、口を窄めて刺激すると、口の中のものの大きさと硬さが増す。
だけどはっきり言って、ここからが大変だ。舌だけじゃ達する程の強い刺激をなかなか与えられない。手のように、うまく強弱のある愛撫も施す事は出来ないし。
ただでさえフェラの技術なんぞに自信はあるわけない。口で奉仕した事も何度かあるのだが、最終的には舌より指に頼っていた。だけど、今回はそれが出来ない。
長時間の勝負になりそうで、姿勢の苦しさも考えると、ゾロは早くもリタイア宣言を出したくなってきていた。

「……ん………うぁ!」

どーやって止めると切り出そうか考えていたゾロは、突然自分の身に加えられた刺激に驚いて、思わず口を離して背を反らした。
サンジが、手を伸ばしてゾロの秘部へと指を埋めてきたのだ。
「あ……ぁ…」
たった一本の細い指だが、中で掻き回されると、びくびくと全身が反応してしまう。更に、内部の奥からサンジの指に刺激されて、液体が伝ってくるのまで感じてしまい、身体が震える。
中から伝い、ぽたぽたと布団に落ちる熱いそれは、先程の行為で、サンジが体内の奥深くに放出し、残した物だ。
「ほら、お口がお留守になってますよダーリンv」
楽しそうにサンジが言う。その顔を睨み上げて、再び濡れそぼったサンジ自身に唇を落とす。
早くこの指の悪戯から逃れるため、サンジを追い詰めようと舌を動かすが、サンジは僅かに息を乱すものの、指を動かす事をやめない。その上、2本3本と指を増やして、更に強く内部を侵してくる。
「う……も、やめ………。無理だ…」
腰が揺れる。姿勢も辛いし、息も苦しい。限界を感じて、ゾロは口を離して訴えるが。
その瞬間。
「!」
解れたそこに、突然大きな圧迫を感じた。
「サンジ!!っや………」
さっきの、道具だと。例の玩具を押しつけられているのだと、瞬時に判った。
今度は指で解された直後な上、内部から零れた滑る液体のせいで、侵入を許してしまう。
「………ぃ、やだ……って──!!」
初めて体内に感じる、無機質の道具の冷たい感触。
一番太い部分を飲み込んでも、奇妙な凹凸が入口を刺激する。サンジのものとは全然違う感触に、ゾロの身体が硬直する。
それでも、前立腺を玩具の凹凸が擦り上げ、その感覚に反応してしまう。
「どんな感じ?」
そんな風に興味深げに聞いてくるサンジに、首を横に振りながら、途切れる声で抜けと伝える。
なのに。

「っ、や─────…!!!」

カチッという音と共に、、ソレがゆっくりと回転するように、体内で動いた。
うねり、内部を広げるような感触。一瞬止まって、今度は逆に回転する。
「うあ……!」
「慣らしたし、今度は痛くはないだろ?」
逃れようとサンジから離れ、布団でのたうつ身体を押さえつけられる。
確かに、痛くはない。圧迫感は強いけれど。前立腺を刺激される事により快楽すら感じる。
「いろいろ出来るんだぜ、コレ……」
サンジが言った瞬間、
「ひっ……っあ!?」
振動が細かく強い物に変わった。
人間からは決して与えられる事の無い、モーターによる動きに翻弄され、ゾロは悲鳴を上げた。
強すぎる刺激は、確かに自身へと響き、身体は反応し脳を乱す。
施される、電動の強制的な悦楽。
意識を飛ばして何も考えずに受け入れたら、それは確かに絶頂へと最短で導くものかもしれないけれど。
だけど─────

「…ぃ…や、だ……サンジ、てめ……が、」
「え?」

聞き返すサンジに、途切れ、跳ねる声で必死に訴える。
───こんなのは嫌だ、お前がやれ────
ハッキリとは言葉にならないが、その意図を伝える。命令形の言葉は、それでも哀願に近い。
性的欲望の処理を目的にした無機質の物体も嫌だし、それに翻弄される自分も嫌だし…
何より、それを楽しげに見下ろす、自分の熱さを伝えてこないサンジも嫌だった。
自分が、思い通りに動く玩具として扱われているようで。
「サ…ンジ………」
呼びかけるのと同時に、体内での道具の動きが止まった。激しい電動による刺激が止み、ゾロが安堵の吐息を漏らした。
「おれがいい?」
そう言って、嬉しそうに見下ろす瞳を睨み上げ、こんな道具よりはなと、不機嫌な声で告げる。
ぐったりと横たわっていた身体を抱き起こされ、サンジの下肢を跨いで膝立ちになる体勢を取らされる。
背中をに手を回し、サンジはようやくゾロの腕の戒めを解いた。
痛みと痺れが残る手で、ゾロは目の前の黄金色の頭を一度小突いてから、その首に腕を回して縋りついた。
いてーよ、などと笑いながらサンジは、今度はその体内に埋められた、玩具へと手を伸ばす。
「ごめんな、今抜くから」
「ぅ、……あぁっ…!」
体内で、ずるりと動いたそれの表面の凹凸に神経を撫でられ、電動の動きにより強制的に快楽へと追いやられていた性感が、限界を超える。
サンジがそれをゆっくり引き抜くと同時に、ゾロの硬く張り詰めていた自身から、白濁の液が吹き零れる。
滑る液体は、サンジの胸から下へと伝い落ち、腹筋の窪みに溜まる。
「ちくしょ……こんなんで……」
こんな道具に達かされた事が情けないやら悔しいやら恥ずかしいやらで、顔を上げられず、サンジの肩で半ば泣きそうに呟くゾロを抱き締め、その耳元でサンジは囁いた。
「これから、おれがちゃんとまたイかせてやるから、なvv」
何度でも、と言いながら。
まだがくがくと僅かに痙攣するように動くゾロの足を更に開かせ、その痴態を目で楽しむ事により、先程口淫されていた時と変わらず熱く張り詰めている自身を、下から当てがった。
ゆっくりと、秘孔付近を自身の亀頭で何度も撫で、先走りの体液を擦りつけ広げる。
入口がヒクヒクと収縮し、物欲しそうに動くのが伝わり、サンジも早急に挿れたい欲望に支配 されかけるが。
自身に指を添え、ぴったりと秘孔に押しつけたまま甘えるような声音で囁く。
「そのまま、座れる? 腰落として……そう、」
サンジの言葉に、深い吐息をひとつ吐いて、ゾロが少しだけ身体を落とす。
「あ………」
だがすぐに止まってしまったゾロの腰に腕を回し、そのままゆっくりと降ろして受け入れさせる。
「気持ちイイ?」
しがみついてくるゾロに、問い掛けるサンジの言葉も、浅い息に掠れている。
「………熱ぃ…」
質問の答えにはなっていないその言葉だが、サンジは気に入ったようで、そうかそうかとゾロの背中をぽんぽんと叩く。
「おれは、サイコー気持ちイイぜ? お前の中も、あっつい……」
言いながら、最奥まで貫く。食いしばった歯の間から、くぅと呻きが漏れるのも構わず、そのまま身体を倒してサンジは激しくその身体を貪った。
「なン…か、…何度でもイけそー……。手加減、やっぱ出来ねー…」
途切れる声で伝えた言葉は、ゾロには届いていなかった。
突き上げる度に、押し出されるように小さく悲鳴を上げるゾロは、サンジの背に縋るのが精一杯だった。

 

 

ゾロが目が覚めた時には、既に時間は昼に近かった。
「朝食のバイキング終わっちまったよ」
そう言って、朝メシ兼昼食で何か食うかー?と訪ねてくるサンジは、いつ起きたのか判らなかったが、身支度はきちんと整えている。
「めし……てめーが奢れよ………」
「はいはい」
恨みがましく、掠れた声で搾り出されたゾロの言葉に、サンジは苦笑して返した。
まあ確かに寝過ごした原因は自分だろうという自覚は、さすがの奥さんでも有った。

だるそうに起きるゾロに、対照的に元気いっぱいのサンジが
「さて、今日はどこ行こーかー? 今日は海はパスしたいんだけど」
と、声をかけてきた。
「?」
元々、熱海行ったら海ー♪と、はしゃいでいたのは、海のある地域で育ったサンジの方だ。
旅行前も「おれの人魚のような華麗な泳ぎを見せてやる+」と、訳わからん自慢していたくらいだったのだ。
なのに突然、海行きを拒むのは一体どーした事かと、ゾロは視線で疑問を訴える。
「今日はまだシミると思うんだよねー…明日にはもう大丈夫だと思うけど」
「??」
ますます判らない。
「やっぱ覚えてないし」
そう言って笑い、サンジは上着を脱いだ。
「!!」
その、普段は白くて滑らかな背中には、幾本もの引っ掻き傷が残っていて。よく見ると、肩には歯型らしき痕すらある。
赤く残る、どう見ても情事の名残の傷痕。
(おれか!?うそだろ、全然覚えてない……;)
旦那さん、目を白黒させて慌てるが、記憶が無いにしろ、そんな所にサンジが自分で歯型なぞ残せる訳もない。
そういえば、最後の方は意識を快楽に飛ばされて、明確な記憶など残ってはいないが、目の前のサンジに必死で縋りついていた気がしないでもない。
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜;;;;;;;;;///////」
ぷしゅーと音を立てそうな程真っ赤に蒸発している旦那さんの顔を見て、まあ気にすんなよ、おれが悪いんだからさーと暢気に声をかけ、
「海行きたかったら行ってもいいし。おれ、浜で遊んでるしさ」
と笑う。気遣いのつもりなのかもしれないが、ゾロにしてみれば、そんな事言われても落ち込むばかりだ。何せ、自分の身体には痕ひとつ残っていないのだ。やりたい放題しているくせに、
サンジの方は理性はちゃんと残していたという証拠を付きつけられ、情けないやら恥ずかしいやらで、益々どよ〜んと落ち込む。
道具やら何やらの件で、叱りつけてやろうと思っていたのだが、出鼻を挫かれた思いだ。

何か言う気にもなれず無言で、温泉ではなく、部屋のシャワーへ向かった旦那さんの後姿を
見ながら、くすくすと奥さんの含み笑いが零れる。

(あーゆー所、かわいいんだよねーvv)

ご機嫌のサンジは、昼ごはんは穴場のおいしい所へ連れてってやろーと心に決める。
元料理人だけあって、日本全国穴場だろうと何だろうと、うまい店の情報はバッチリだ。
さてここからの道筋はと、かばんの中から地図を取ろうとしたサンジの目に、床に投げ出された例の「お道具」が映る。
「残念だったなー折角買ったのにな、お前よかおれののがイイんだってさ、ゾロは♪」
楽しげに、ピンクのバイブに語りかけるサンジ。見てる人間がいないのが救いの危ない光景である。

「ま、捨てるの勿体無いし、また何か使えるかもしんないからな。ほら、喧嘩した時のお仕置きとかー」
奥さんがこう呟いたと同時に、シャワーで湯に当たってる筈の旦那さんが、何故か寒気に震えた とか何とか。

結局お道具は、そのまま大切にケースに戻され、かばんに仕舞われてしまった。



果たして今後使う事があったのかどうかは、夫婦の秘密という事で。




お道具編…無駄に長い割にえろくないですね…。
ありがちな展開だわ肝心の所書いてないわ。
途中でボキャブラリも尽きてるし;;
えろ文、もっと勉強しよー…。色気無さすぎ…うう;
とりあえず、奥さんのヤリたい放題書けたのは楽しかったです;



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